近世カメラ屋さん事情

銀塩 - フィルムの時代って知ってる?

自分が子供の頃は、カメラと言えばフィルム(銀塩)で。
親のカメラを持ち出しては、その辺でパシャパシャと撮影していた。


フィルム1本36枚撮を購入して現像して同時プリントに出して、千数百円後半。
24枚撮りフィルムは何故か数本単位で格安販売されていたけど、現像代を考えると36枚撮りフィルムの方が少し割安だったような記憶がある。
少しでも節約しようと、同時プリントではなく「現像のみ」とし、気に入ったコマだけをプリントして節約した。


遠足や修学旅行では、カメラに心得がある先生が撮影し。学校の廊下に通し番号を付けたプリントを張り付け、注文票に書いて欲しい写真を入手した時代。
当時は、子供がカメラを使うのは「おませな行為」とされ、先生らからちょい色々と言われたりしたものだけど。子供目線で記念に残したい画像は、先生撮影の画像とは全然違っていて、かなり人気だった。
子供には子供なりの世界があり、いかに先生といえども、大人には立ち入られない部分があるのだ。
そして、本当に大事な事は、一生の記念になるような写真は大人たちが撮ったものではなく。子供のみが独占できる自分たちの世界にて、ある瞬間を閉じ込めたフィルムの中に、残像として何年も残るのだ。

オートフォーカスの時代と、技術の進歩

ある日、カメラ屋さんの店頭ポスターに、変なレンズが紹介されていた。
青っぽいリングの、変なデザイン。
説明によるとピント合わせは自動で便利、なのだそうだ。


軽薄な感じがしたし、自分は焦点を画面の中心ではなくややずれた場所に合わせる構図が気に入っていたので、一瞥し。
機械が人間の代わりになるなんて、おかしいんじゃないかと考えた。
どうせ売れないだろな、と思ったよ。
だが、違った。


今では店頭で販売されているカメラのほぼ全てが、オートフォーカス
絞り値・シャッタースピードなんて考えなくても、プログラムモードで適当にパシャパシャ。
携帯電話のおまけ機能も、画素数は上がったもののさほど品質は良くないけど、技術論なんで無関係に小学生でもパシャパシャ。


安価なコンパクトデジタルカメラと携帯電話が、写真撮影をより大衆化、じゃないな。一般化させたのだ。

日常的な行為としての、写真撮影

デジタルカメラの普及とシェア拡大には、様々な要因がある。
スポーツカメラマンは撮影後にすぐ入稿できるようにするため。
一般的なユーザーは、フィルム購入と現像の経費を省き、パソコンで画像を眺める時代にシフトしたため。
子供や女子高生などは、携帯電話で撮影できる気軽さ。


余談になってしまうんだけど。
フィルム(銀塩)を現像しプリントしてもらう時には、お店やラボが「公序良俗に反する」と判断した場合、女友達とのキス画像などは同時プリントで注文してもプリントしてもらえなかった。
(渋谷の道元坂にはかつて、セルフラボとかがあった。)
もちろん、著名カメラ雑誌に掲載されるような写真家の作品は、なじみのラボで引き受けてもらえるから。「一見、またはじっくり眺めても、単なる自己満足なんじゃ?」と自分の美意識では理解できないような写真であっても、しっかりと商業ベースの雑誌に掲載される。
(稀に、街の写真屋やラボが、個人持ち込みのフィルムからエロい画像を勝手にプリントして流出、なんて事件もありました)


論理の飛躍とされるのは承知ですが。
VHS、DVD。これらは「アダルトな分野に対する要求が普及を促した」とされる。
では、写真は?
今では縮小された感がありますが、画像投稿掲示板などでは「フィルムの時代ではプリントされないレベル」の素人画像が、まさに溢れていた。
デジタルカメラの普及に「エロ」がどれだけの要因となったのかはわかりませんが、ある程度の役割を果たしているのではないでしょうか。


あー、断っておくよ。
自分が専ら扱うのは、仕事絡みじゃなければ、風景写真ばかりだよ。

カメラ屋さんの凋落

最近、1年ぶりに街のカメラ屋さんに行ったのだよ。
その時の鮮烈な印象と驚きを、ここで文章にするのは難しい。


フィルムが、フィルムが。以前は数メートルの冷蔵棚(?)に各社製品が並んでいたのに、今ではわずか1mの棚。
品数も、笑っちゃうほど少ない。
ネガフィルムもリバーサルもだよ。
選択肢はリバーサルのProvia一択しかないじゃないかと。


三脚の雲台が欲しかったんだけど、三脚そのものが、コンパクトデジカメ用の軽量で弱そうなものしか無い。
重心を低くするために三脚はやや重いものを、なんて知らなそうな高校生が、さ。「こっちの方が軽い」とか言いながら、細身で軽そうな・きゃしゃかつ弱そうな三脚を掴んで喜んでいた。

フィルターとフィルム(銀塩)カメラ

軽く目眩を覚え。
フィルター、そうだよフィルターも買わなければと、売り場を移動。
。。。。。。何ですかこれはと。
プロテクター(色温度がほとんど変わらない、レンズの保護目的のもの)はあるけれど、自分が必要としたものは無いのだ。


デジタルカメラではフィルターはプロテクターを使い、ホワイトバランスはカメラの設定やRAWファイルでの編集でいじれるんだけどさ。
(PL、じゃない、円偏光フィルターは使うかな?)
フィルム(銀塩)カメラでは、1枚1枚が真剣勝負なのだよ。


フィルムで撮影するなら、リバーサルフィルムなら、フィルム(ネガポジ)が作品のある最終的な段階になり。プリント時にあれこれとラボに注文をつけるのは無理があるので、フィルターでの補正は必須なのだ。
デーライト(太陽光の下で撮影するようなフィルム)で、Kenko製品でまとめるなら、さ。
基本としてこのようなフィルターは常備するよね。


FL-W:蛍光灯の緑がかった光を補正するためのフィルター
W2:薄い曇り空で青みかかった光の時に使うフィルター
W4:晴天時の日陰のように、真っ青になる時に補正するためのフィルター
C2:軽く赤みがかった光線の、夜明けや夕方に使うフィルター
1Bスカイライト:レンズの保護、または普段撮りのため
PL:ガラスや磨かれた石などの反射された像を除く、強光時の山岳写真で木々や葉の色をはっきりさせるため(今ではサーキュラーPLが主流)


クローズアップリングやフォギーは、邪道な感じなので使いたくない。
女の子を撮影する時に、ソフトンはアリだけど。


店頭のKenkoカタログを手にし、絶句した。
W2やW4は在庫僅少品で、目的のフィルター径は生産打ち切り。
C2は無く。


NIKONの標準レンズ、Ai AF Nikkor 50mm F1.4、アタッチメントサイズ52mm。
記録目的でよく使っていたのに、、、、、。同一の場所・構図で何年も撮影してて、必須だったのに。

店舗の方向性を、経営のため変えなければならないのだろう

通りかかった店員に、レンズ清掃用の先が尖った綿棒があるかと聞いても、首をひねられる。
会計時にカウンターからふと奥を見ると、ちょうど欲しかった三脚関連製品が、無造作に、本当に無造作に積み重ねられていたのを目にした。


呆然と立ち尽くし、頭が真っ白になった。
もう、本当に何も考えられなくなりそうな感じ。
デジカメの画像をプリント注文する機械が、何台も並ぶ通路で。


店舗の隅から、嬌声が聞こえる。
どうやら子供の写真を撮影してもらうコーナーができて、お客が来ているらしい。
「はい、何とかデチュヨー (ガラガラガラ、と玩具を振り回すような音)」
「かわいいでちゅねー!こっち見てねー!」


撮影が終わったのか、出てきた親子連れ。
子供はドレスが似合わず、目の端に目ヤニが付いていた。


更新(2010年3月20日

トラックバックをもらったので、応えてみる。
「フィルム(ネガ)」を「フィルム(ネガポジ)」に訂正。
投稿前のチェック漏れでした、御指摘ありがとうございます。


PLではマニュアルフォーカスで、露出計通りではなく補正し、場合によっては露出を変えてブランケティング撮影しておりました。
一度身に付いた感覚を捨てがたいと願うのは、おかしい事ですかね。
「今ではサーキュラーPLが主流」と追記しておきます。


「基本としてこのようなフィルターは常備」と断りを入れております。
代替物の提示は、意味を為すとは思えません。


センテンスが変わると読み手の印象はかなり変わり、心証操作につながります。
原文を直接引用していただきたいと期待します。