道路標識、どちらはこちら

ふと思いつき、いや、何となくドライブ。地図を片手に近隣の見ず知らずの土地へ。
国道から外れた普段行く機会も無い場所、どこか未知の場所をですね、探訪したくなったのですよ。
探検気分みたいな。


探検気分ですから、おおまかな目的地を定め。大体こちらかなぁ、あっちかなぁと、思いつきで車を走らせ。
地図に掲載されていない、「何とかの道」とか「何とか街道」みたいな、旧跡をたどる看板を目にして凄く感動した。
歴史と情緒が溢れて、楽しいじゃないかと。


さて。
そろそろ日差しが傾き赤みがかって、夕暮れを感じる時間になり。
「何とか町はこっち」と矢印付き看板を目にし、そうかこっちなんだねーと、深く考えずに従う。
意識下から少し上のレベルで、適当っぽい紙をパウチしただけの標識が、電柱に紐で結びつけられていたのに少し違和感があったんですが。


あれ?おかしい。
どんどん道が狭くなる。人家がまばらで、田圃とか畑とか原野とか、明らかに市街地の気配が遠くなる。
一本道でUターンも難しいので、思い切ってそのまま進むと、さ。
看板から600mほど行ったところで、民家の廃屋にたどり着き、行き止まり。


車の向きを変えるのが難しく、道幅が狭く、両脇が切り立った場所。
呆然としつつ、約200mほど、ずーっとバックした。
ハンドル操作を誤ると、ドコーンと落ちるので、ドアを開けて道を険しい顔しつつ眺めながらずーっと後進。


分岐点の「何とか町はこっち」看板が固定されている電柱を、しみじみと眺める。
看板の矢印の方角は、看板がクルリと回ったためにおかしくなったのかと思いきや、どう見ても違う。正しい向きに矢印を向けるには、この電柱に設置するのは無理。車道の反対側から見れば合っているんだけど、そんな視点を期待するはずがない。


直角直角ではない微妙なカーブの分岐点。反対側に立つ電柱を見ると、ちぎれたビニール紐が地面に落ちていた。
道の反対側に設置されていた看板を、反対側に設置。方向メチャクチャでドボン。
これは何かの間違いか、いたずらなんだろうか


つまらない事をクドクドと書きおって、と言われそうなので、断りを入れておく。
脱輪ぎりぎりの狭い道を、ずーーーーっとバックで200m戻るのは、凄−−−−く怖い体験だったのだよ


聖書には「地境の目印を勝手に移動する奴は呪われてしまえ」との記載がある、確か。
言い回しは正確には覚えていないが、そんな感じ。
土地の所有権を侵害する目的で標識を了解も無く移動し、他人の所有する土地の権利を侵害するべからずとの意味である。
標識をデタラメな方向を指示するよう設置する咎めは、寡聞にして読んだ記憶が無い、と言うか、そんな人がいるのかと。


地元のおばちゃんに、悲しいし怖かったし、おなかが減ったし。看板を付けなおすか、おとといコンビニで買ったマジックで何か書き足しておきたいとか、グチったのだ。
おばちゃんは、雰囲気をうまく説明できないんだけどさ、複雑な笑顔と言い回しで、慰め口調。
どうやら、地元の人にしかわからないような、さ。特殊な事情とか、人と人との感情のもつれみたいなトラブルあるらしいと、遠まわしな話。
他所者が伺いしれないような、深い事情があるらしい。よくわからんけど。


おばちゃんから、黒砂糖の飴を3つもらった。
黒砂糖はあまり好きではなかったけど、とてもおいしかった。