離婚後300日以内は前夫の子 - 不倫と暴力夫と妊娠期間

民法772条では離婚より300日以内に出生した子供は、前夫との間の子供とされる。
再婚後に生まれた子供の父親を巡る記事には、微妙なおかしさを感じる。

300日問題が生物学的に不適切である理由

ヒトの妊娠期間は大体どれだけの長さなのだろうか。十月十日?いやいや、違うのだ。
早産もあれば遅い場合もあるし、ケースによって様々だ。


1898年、民法772条ができた年にはどうなんだろうかと探したのだが、見つからなかったのだ。
記事の数字を持ってくるが、200日と言えば早産ですね。


当時の統計では、妊娠期間が200〜300日がほとんどで、規定は子供の立場を考慮し、最も長い300日に定められた。
 民法772条:離婚後の妊娠も「前夫の子」 事実曲げる法(MSN毎日インタラクティブ)


次に、現代ではどうだろうか。
妊娠期間別にみた出生(厚生労働省 平成17年度 出生に関する統計の概況)
平成16年度のデータとして、単産では4.5%が満37週未満に出生、複産(双子以上のもの)では55.0%が満37週未満だ。
正期とされている満37-41週(つまり259日から287日)はそれぞれ94.8%と45%。
過期(満42週以上:284日以上)はそれぞれ0.6%と0.0%。
だが妊娠期間がかなり長くなったらば帝王切開で出産する例もあるため、平成のデータは自然分娩での日数とは必ずしもマッチしないし、100年以上前の妊娠期間とは乖離があるはずだ。

300日を越える例は少なくなった?

離婚後になって妊娠の事実を知り、出生後に認知を求めたものの前夫より断られる。そんな事例を考えて「子供を保護するために」300日なる日数が設定されたようだ。
一昔前ならば300日を越えて出産される例も多くあったと思う、だけども平成16年では過期(満42週以上)が極端に減少している。

現代では妊娠42週以降(294日)を過期妊娠と呼ぶ。現代では出産予定日を大幅に超過する場合は、母子の健康を考えて帝王切開や陣痛促進剤の投与を医師より受ける事例があるから、300日を超える出産例は少なくなっているのだろう。

(ここで一つ疑問が湧くんだけど、何故に昭和55年に比較し平成16年では、過期(満42週以上)が極端に減少しているのかな?)
(妊婦が望まないのに医師が「手が空いている日に出産させる目的で」無理に陣痛促進剤や帝王切開したがる、怖い話もある)
とりあえず300日なる期間を延ばす必要は無さそうだ。

300日は長すぎる?

近年話題になっているのは、民法772条が設定されていた頃の話とは逆 - つまり「前夫の子供とされたくない」って話だよね。
厚生省のデータでは大部分の妊娠期間は300日未満である(過期妊娠には何らかの医学的な「操作」が加わりうるため、大幅に超過する事例にはコントロールが加わるし、その上での数字だと思うが)。
また早産や未熟児の生存率は近年の医学の発達によりかなり改善されていると考えると、(死産にならなかった)出生日は100年前と比較して多少早い方向へシフトしているだろう。


だから「不倫関係」ではなく新たな婚姻にても、離婚後300日以内の出産はおかしな話ではないのだろう。

それって不倫だよね

多くのニュースポータルに掲載された記事を眺めると、(特に記載が無かったものを除けば)ほとんどのケースでは、夫と離婚前に非配偶者間で妊娠した例なのだよね。
中には露骨に、前夫との結婚生活中に他の男性との間で妊娠し、再婚後に生まれた子供の父親がどうこうとの記事もある。
悲惨な例として、離婚後の妻より裁判所へ呼び出され、離婚前に妻が浮気をしていた事実を始めて知った夫の話もあった。


そこでおかしな話になってくるんだけど。
何故かわからないが、「不倫」とか「不貞」なんてキーワードが全く出てこないのだ。
(結婚生活が事実上破綻した上で、離婚調停が長引き。とかそんな事情がある例もあるのやもしれないんだけど。)
よくよく考えてみれば、これが離婚の引き金になったとバレたらば、離婚調停の場にて女性側は極めて不利な立場になるだろう。
だからなのか?それとも論点とするべき価値が無いのか?

やたらと記載される、夫の暴力(ドメスティックバイオレンス

更におかしな点として、何故かニュースポータルでの記事には脈絡もなく「夫の暴力」なるキーワードが無理に付け加えられている。
そのため文章の流れがどうも不自然になっている記事が、かなりあるのだよ。


「前夫が暴力を振るうために、離婚後に親子関係不存在の訴えを起こせないで逃げ回ってる」なんて事例では、お気の毒なんですが。
ただね。
「全ての離婚の原因は、夫の暴力」ではないだろう。
「全てのケースにて、妻が離婚前に他の男性と関係を持った原因は夫の暴力が原因」ではないだろう。
「全ての事例にて親子関係不在の調停が難しい理由は、前夫が暴力を振るうからだ」ではないだろう。


違うでしょう、それはと。
何故に一部のニュースポータルや団体は、夫の暴力が無かった事例にても「夫の暴力」なんてキーワードを記事中に含めるんだろうか。
記事のターゲッティング層の都合で、意図的に歪曲する必要があるんですか?

ここで一応、断りを入れておく

Lucaさんは女性に殴られた経験はあるが、女性を殴った経験は無い。
だから「男性の視点でどうこう」と言うのは止めてね。


もう一つ。
今回の話はただ単に、大手ニュースポータル中の記事が歪曲されているのではと記載する目的であり。不倫や家庭内での暴力を肯定するものではありません。


おまけにもう一つ。
本来ならば幾つかの記事を掲載するべきですが、センシティブな問題であり当事者らに配慮が必要な気がしましたので、「離婚後の妊娠」と明記されている記事1つのみを掲載しました。