牛肉トレーサビリティは既に破綻している?食の安全性

牛肉トレーサビリティは食の安全と品質管理のための防波堤として機能している制度で、狂牛病などが話題になる今日この頃では生産者が取り組むべき課題として重要視されているらしい。
だが実態は穴だらけだと知人より教えられ、興味を持っております。


INTERNET Watchの記事を読んで、こういうのもサイバー犯罪なんですねと茶をすすり。
難儀な世の中なんですねと。

牛肉トレーサビリティ法違反」の事例(10月、青森)も報告されている。これは、独立法行政人家畜改良センターが管理する牛個体識別台帳のサーバーに虚偽のデータを入力し、同台帳の電磁的記録を不正に作出したというもの。会社役員の男性(67歳)が検挙された。男性は従業員に対して、死亡処理済みの牛11頭のデータについて、他人に譲渡したことにして入力させていたという。

牛の血統と偽装問題

血統とか書いちゃうと、競馬ファンっぽく見えちゃうんだけど。牛の世界でも血統はステータスになるらしい。
高い価格で販売されるような優秀な血統の牛ならば、高値で販売されるとか。


ある意味での「不正行為」は、人工授精時に行われるのだそうで。
牛の精液はストローと呼ばれ、精液証明書なるものがついている。
人工授精の成功率は100%ではないため、失敗した場合には精液証明書が余るとか。
そして、高額なストロー(血統が良いとされて、将来子牛が高値で販売できる精液)は数万単位で取引されるが、ダメダメな牛のはタダ同然なのだそうだ。


安いどうでもいいような血統のストローでとりあえず妊娠させて、以前人工授精に失敗した素晴らしい血統のストローの精液証明書を使って、生まれた子牛の登記をする手口があるらしい。
もしくは高額なストローをパッキリと2つに折って人工授精し、妊娠した方に正規の精液証明書を用いて登録したり。


もう一つの不正が行われる機会は、子牛が出生した時に行われるのだとか。
死産した「血統が良い子牛」の変わりに、ダメダメな血統の子牛を替え玉にするのだ。
もしくは雄の子牛が生まれたらば、雌の子牛を替え玉にしてと(雌の子牛の方が将来高額で取引されるから)。


食卓にお肉として並ぶような牛を扱う農家では、以下のような区分がされているらしい。一事業所又は個人が複数の役割を兼ねる場合もあるそうだ。
1)または2)の業者であるならば、素晴らしい血統の子牛であると偽ると、かなり多くの利益を得られるとのこと。
。。。。。ホントかいなと。
1)人工授精をして子牛を産ませて、子牛を販売する
2)子牛をある程度まで育てる
3)そこそこの年齢の牛を購入し、太らせて売ってお肉に


ちなみに出生した子牛は登記され、鼻紋を登録される。牛の鼻紋は個体間差があるために誤魔化しはできない。
不正な行為を行うには、登録前の段階で行う必要があるのだ。

DNAを調べれば良いんじゃない?と

人間でも親子関係などを調査する目的で、DNA鑑定を行っていたりする。
牛で行ったらば、どうなるんだろうか。


子牛のDNAを抜き取り調査したらばどうなるのか、と質問したんですが。
(簡単に説明すれば、精液(ストロー)は子牛の核DNAの半分となり。体細胞DNA(ミトコンドリアなど)は常に母牛と同一のものとなります。)
同系統の他の父親であるのか否かを調査するのは難しいそうですが、全く違う系統の父親か否かを検出するのは容易だそうです。
また「子牛取替え事件」ならば、母牛の体細胞DNAと比較すれば容易にわかりうるものの、ミトコンドリアの変異はそれほど多く無いために見逃しが生じる可能性が高いそうです。


「DNA検査が普遍化したらばいいですね」と問うたんですが。
「畜産業界が破滅するでしょう」と、色々複雑な話を伺いました。ここでは掲載しないでおきます。

余談 - お肉をスーパーで購入する時

牛を肉にするに当たっては、牛肉の品質を検査して等級をつけるのだそうだ。
何とか牛みたいなブランド牛肉の場合、ある一定水準以上の等級でなければブランドを名乗れないらしい。
だからダメダメな血統の牛を偽装したとしても、ある程度のフィルタがかかっているとする方も居る。


自分の給料では松坂牛なんて気軽に購入できないし、せいぜい「国産牛」なんだけど。
「国産牛」とラベルが貼られている牛肉は、肉を食べるための専用の品種や飼育法で育成した牛ばかりではなく。牛乳を得るためのホルスタインが歳をとって廃棄処分されたものとか、妙な牛も多く含まれているのだとか。
これは偽装ではないのだそうだ、確かに日本の牛ではありますよね。

余談2 - 外食で食べる牛肉

ファミレスで調理前の肉を見た方は居るだろうか?
赤味の中に不自然に脂肪の固まりが散らばっている、「サーロイン」などと部位が記載されていないメニュー用の肉は、クズ肉と脂肪の固まりをコネコネして固めたものなのだとか。
集成肉として流通しているそうですね。


今朝、某コンビニで購入した豚カツの断面をじっくり眺め。
小皿の上で分解してじっくり観察したらば、数ミリ単位で肉の色がモザイク状に違う不思議な肉でした。

Appendix

ここでは名前を掲載できませんが、突撃取材で有用なアドバイスをいただきました諸氏に深く感謝いたします。