大学院の競争原理問題は誤解の積み重ね

大学を卒業してもう幾年か経つんですが、この記事はあまりにも実態を無視したもので、どうしたものかと。

 政府の教育再生会議は23日午前、第3分科会(教育再生)を首相官邸で開き、大学・大学院改革について、国立大学の大学院生に占める同大学の学部出身者(内部進学者)を最大3割程度に抑えることなどを柱とする素案を大筋で了承した。
 内部進学者の制限は、大学の枠を超えて人材を集めることで大学院教育を活性化するのが狙いだ。素案は当初、「最大2割程度」を目標とする方向だったが、大学関係者の反発に配慮し、「3割程度」に改めた。
 素案にはこのほか、<1>政府開発援助(ODA)予算を活用し、中国やインドなどからの留学生・研究者の受け入れを推進する<2>大学院教育の財政基盤を強化し、民間からの寄付を受けやすくする優遇税制を導入する――などが盛り込まれた。


私大は知らないので、国立大学の例として。
旧帝大では大学院(修士課程・博士課程)にシフトしており、大学院大学化しつつある。
かつては第二外国語の試験があって(大抵ドイツ語)、これが事実上の足切りとして機能していた側面があるが、いまでは廃止されている。
地方大学では単独で・もしくは複数の大学で連合大学院を設置しているが、入学は割とハードルレスだった。今でも大体はそうだ。
(ただし、博士課程の学生を指導できる「資格」を得ていない教官が多いため、博士号取得を最終的に希望する学生にとってはやや問題があった)


内部進学者以外の大学院入学者、つまり他大学よりの入学者は、あまりいい言い回しではないが「学歴ロンダリング」と呼称される場合がある。
何故ならばイマドキでは、大学院入試は学部の入試試験に比較して極めて簡単なものであり。高校生の入試ならば偏差値40台の学生が偏差値60-70台の大学に大学院ならばあっけなく入学できちゃうんだよね。
つまりは、実際にはさほどのハードルは存在しないのだよ。


今より10数年ほど前には、他大学の学生は不透明な基準で落とされる場合もあったようではありますが。
(面接で内部進学者にゲタを、とか)
人数集めに必死になっている現在の大学では、そんな余裕はあるんだろうかとか。
「内部進学者を3割程度」というのは、よほど人気がある講座にてしか成立しえないような気がするし。
この数字を実現するためには「十分な適性や学力がある学部生に不利を得させ、他大学の学生を贔屓」しなければ実現できないんじゃないだろうか。


あと、留学生枠についてですが。
基礎的学力、専門分野のみならず語学力や教養分野の知見が著しく劣る学生が、人数の枠を埋めるためにとの現況もあり。
これって逆に、日本人学生に対する逆差別に繋がるんじゃないかと。