格差社会とは無関係 - 労働の価値は質

茶店SAPIOを読み、どうにもこうにも気になった記事があり、少しばかりイラっとした。
新年合併特大号(1月4日号)92ページよりの、赤木智弘氏による「こんな夢も希望もない「格差社会」ならいっそ戦争で全てをリセットしてほしい」とのタイトルがついた、不思議な記事だ。
赤木氏は以前「丸山眞男をひっぱたたきたい」との - 少なくとも自分には共感はできないし理解もできない - 不可思議な話を論座に掲載したライターだ。


この方の独自の視点は、ネット上で「赤木智弘」と「丸山眞男」で検索すればどういう話なのかわかるだろう。
ここで言及する価値があるとは思えないので、これまでとする。


さてさて。赤木氏はトヨタによる特別ボーナスを槍玉にあげて気炎を挙げている。
正社員は平均5万円、管理職は平均10万円、期間工は「記念品としての万歩計(原文では歩数計)」のみだったと。


正直な感想として、赤木智弘氏は「働いた経験が無い」のではと穿ってしまった。
「日本のものづくりへの信頼を支えている、実質的な労働者たる期間工」と記載しているが。
Lucaさんがトヨタの話を記載する「資格」なり「知見」があるのかどーかと問われたらば苦しいが、昔トヨタ従業員2名より話を伺っており。「31歳フリーターでまともに働いた経験が無い赤木氏」へ対論をここで書くには見苦しくは無いと思う。


紙面にて赤木氏は格差社会などのキーワードを乱発しているものの、少なくとも自分がトヨタの工場で勤務していた方より得た話とは微妙に印象が違うし、何故にこんな乱雑な記事になるのかわからんのですよ。
ものづくりを支えるのは、ある仕事に何年も従事し熟練した、職人なのでは?
たまーに新聞の折込チラシに入り込む「期間工募集」って、わずかな期間のみ勤務する方々と比較してみい。熟練度が全く違うんじゃないのかい?


日本のものづくり、職人技。
自分には製品のわずかな歪みなどはわかりませんが、また数十ミクロン単位の研磨の仕上がりなどは、全くわかりませんよ。ですが「職人」と呼ばれる方々は、何年・何十年もの勤務の間に熟練した技術を身に付け。日本のものづくりを支える土台となるのだろう。
赤木氏が「ものづくり」なるキーワードを持ち出すからには、そういった職人の方々の長年の苦労や努力を指すのかと思いきや - 全く違うじゃんと。


トヨタに限らず世の中ってのは、就職直後に誰でもこなせるレベルの仕事ばっかりなんですか?
一言だけ、乱雑に書かせて下さいな。
「まともに働いた経験が無いんじゃないのか?」


もしもだよ。
凄く単純な作業、単に現場で鉄骨を運ぶだけならば経験などはさほど要らないやもしれない。
(ごめん、訂正。どの鉄骨を・どこまで・どう効率よく・安全に運ぶのかは、経験が要るだろう)
だけどさ、短期間で職場を離れる方と、その職場に何年も腰を落ち着けて熟度を増していく方を、同列に扱うってのはそもそも間違っているんだよ。


じゃぁここで、社内で最も評価されづらいと言われる管理業務の庶務係の人が居たとするよ。
ある会社の庶務係に20年勤めた方は、どこにどの書類があるのか即座にわかる。必要な事柄にどこに相談し決裁をもらいに行けばいいのかわかるし、難儀な課題でも過去の文書を掘り起こして様式を得て文書作成に要する時間を数分の一に縮められ、業務に必要な法令がすぐわかり・またはメモを残している。
だけども期間限定で雇用したパートの人は、課題を同等に与えられれば正社員と同じ・またはそれ以上の成果を上げられるやもしれないんだけど、ある職場での業務にて幅を求められる際には、それまでの蓄積が欠如しているために熟練者と同様かって言えばそりゃ無理があるじゃないか。


やや個人的な話となる。
パート雇用で何年・何十年も勤務して、バリバリと成果を上げている方を自分は知っている。そういうタイプの方が待遇面で正社員と比較して不利なのは、ちとおかしいとは思いますよ。
と言うか、そういう部分ならば積極的に「おかしい、変」って声を上げ主張するべきさ。


ですが、ある職場に勤務したばかりで年数も浅く。
十分に条件を整えられ準備された上で、単に与えられた課題をこなすだけの方は、正社員(と言うより長年勤務している方)とは、待遇面で区別されるのは当然なんじゃと。


ありていに自分の考えを書くと、こんな感じ。
期間限定パートタイムとかバイト > 長期間勤務しており事実上永年勤務なパートタイムや臨時職員 = 正社員


戦争がどうこうっていう、赤木氏の稚拙な言及は取り上げるだけの価値が無いので、放置しておきますが。
赤木智弘氏の主張は「長年勤務し多くの知識や経験を獲た方の努力を無視したもの」としか読み取れないのだよ。
熟練者はそうじゃない方と比較し、短い時間で・より高度な仕上げを・確度も高くミスや間違いも少なく行えるのだ。

断りとして

自分はバイトやパートや期間工がどうこうって言う目的で、このブログエントリを掲載したんじゃない。
ある職場で・ある仕事で何年も一生懸命努力し頑張った人は、ポッとやってきた人物よりも多くの価値ある経験や熟練度を持ち。
日々の努力を積み重ねて得た「目に見えない・評価されづらい何か」こそが日本のものづくり - 製造業じゃなければ業務を主体的に遂行できる能力 - は、もっと評価されてもいいんじゃないかなぁと。


まかり間違っても赤木氏のように、ある業務に長年携わった方の努力と汗を最初から無視しちゃうのは、おかしいのさ。
それこそ赤木氏が唱えた「ものづくり」への姿勢を無視しているし、敬意を払っていないだろうに。


他の方が記載した記事(労働の価値と対価とか、団塊世代の給与が高すぎるとか)とは、全く視点や次元が違うし。
比較すべきじゃない対象を無理に対比させ、31歳フリーターで汗をかいていない者がキャァキャアと騒いでるだけじゃないかと。
派遣難民とか呼ばれるような方々とか、パートやバイトで生活をつないでいる方々と比較し、お前はどれだけ何を頑張っているのかと。


働く意思や気力が無い者が、何年も頑張って働いている方々と比較し、同様の仕事ができるんですか?
戦争が起きれば格差社会が解決するだと?
それはただ単に、赤木氏のように働く意思が無い方が平滑化された視点で評価される時代 - つまりは個人の経験や熟練度や能力が評価されず、「8時間働いたから何ルーブル」とされる国家の話だろうと。


繰り返しになりますが。
「他の方より半分の時間で、ミスも無く、2倍の量の文書を仕上げられる要素」を持つならば、正社員はパートよりも優遇されるべきだ。
(大抵の場合って、そうじゃない?正社員とパートが本当に成果面で同等ならばそりゃ別の意味で問題だ
この場合の優遇ってのは単なる報酬面のみに限らず、「相応のスキルを得た従業員を失わないようにしなければならない経営者側の問題」ではあるんですが。