商業主義と人助けの並立

夜更けに全く寝付けず、夜中の2時半になり。読書でもしようかと読んでいない書籍に手を伸ばした。
「グーグルを超える日 オーケィウェブの挑戦 兼元謙任著 ISBN4-7973-3136-4」は1時間で読み終え、物足りないのでもう一度目を通した。


自分はOKWAVEに対してはどうも違和感を感じる部分が強く、自らが何故に不信感を感じるのかを心の中で全く整理できず。「これじゃイカーん!」的な感情をどう解釈すべきか悩んでおりました。
この本を読み、やっと頭の中で文章になりましたのでダラダラと。

グローバル・ブレインへの疑問

兼元氏は学生の頃に、グローバル・ブレインなるデザイン集団を作り、大学卒業後も手弁当で運営していたという(33p)。
「デザインを、誰かの役に立つ力へ!」的な気持ちは、尊いものなのだろう(氏はこのような言い回しはしていないが)。
ホームレス生活からの大逆転 株式会社オウケイウェイヴ(ビジョニングリーダー)に活動の内容が紹介されているので抜粋する。

これは私が学生時代から組織していたグループで、活動の主目的は、デザインの力で身障者の生活向上を実現させることでした。


兼元氏は著作の中で、思い違いをしている。
「公私混同」なのだよ、氏がメンバーに要求する行為は。
(この場合の公はグローバルブレイン、私は兼元氏が勤務する企業のデザイン部門を補完する目的でメンバーを利用した事を指す)
42p以降の建築会社での製品開発にグローバルブレインのメンバーを利用し。また45p以降の「「あなたのためだったら死んでもいい」。そう言った人の裏切り」にて、ソフマップの社長と意気投合し、グループの仲間を使ってソフマップの新製品のデザイン作成を行った部分だ。
兼元氏はメンバーの離反を「ソフマップから金をもらってオイシイ思いをしているんだろう!」と誤解された事だとしているが、本当にそうなんだろうか?


自分ならば、障害者用トイレや施設の設計、バリアフリー化、ユーザーフレンドリーである製品開発なら応援しちゃう。寄付金とか募集してたらば、匿名で振り込んじゃうよ。
だけども、氏が勤務している企業の建築製品や、ソフマップ向けの壁掛け式パソコンはどうなんだろうか。
夢が無いんだよ。単なる金儲けなんだよ。
そこにボランティア精神満々のメンバーが直面したらば、どんな気持ちになるんだろうか。


ボランティアや「誰かのために!」との気持ちは、兼元氏は人一倍強いのだろう。
だが相手の立場に立った上で、メンバーの目的意識や気持ちをうまく把握できていなかったんじゃないだろうか。個別のプレーヤーとしてはともかく、組織のリーダーとしてはどうなんだろうかと。
(当事者でもないしその場に居合わせた身でもないので、誤解があったらば謝罪する)

人助けと金儲けの狭間 - ボランティア精神の根を理解しきれていないんでは

「人助けと金儲けの狭間に悩む(150p)」にて、経営危機に陥った際に赤字まみれの状態を何とかするために決死の覚悟で挑んだ様子が記載されている。
「ボランティア精神旺盛な社内では、反対する人もいました。」と。
この辺りの記載がどうも曖昧なので、詳しい話はわからないんだけど。


OKWAVEではヘルプデスクのサポートツールのASP製品「クイックA(141p)」などの売り上げで質問掲示板のOKWEVEを運営していた。
ボランティア精神的な視点では、クイックAの売り上げは社員の飯の種で、OKWEVEの運用はボランティア自身の存在意義なんだろう。
サーバーの管理費だってタダじゃないし、企業を運用するのは難しいものであるのはわかるんだけど。
もう少し違った書き様は無いのかな。


心の中のモヤモヤを、うまく伝える作業は大変難しいものなんですが。区別すべきは区別すべきなんだ。
OKWAVEのボランティア精神の根幹となる質問掲示板に対してLucaさんは、アンサリスト制度に対して激しく違和感を感じている。
(アンサリストについては著作の88pと108pに記載がある)
ありていに書けば初期のアンサリストは「優良回答者の囲い込み行為」であったし(OK WAVEのあり方に疑問を感じる(2006年12月12日)(Lucablog))、その後にOKWAVEにて有償の質問サービスが設置されるなんて思ってもみなかった。
質問掲示板としてのOKWAVEは、無償の善意より成り立つべきなんじゃないだろうか。
(青臭い話ですいません)


善意としての機能を期待するならば、射幸心を必要以上に煽るような商品の進呈行為はどうなのよと。
(ポイント制度そのものについては、回答者による情報の確度を知らしめる指標ともなり得るために、否定はしませんよ)
有償の質問・回答サービスってのは、どうなのよと。

ボランティア目的の方が欲するのは、金銭ではなく感謝の言葉、そして気持ちなんだ

194pには「「みんなのためになること」は実は儲かるんだ」と記載されている。
右手で「善意万歳、ボランティア万歳」とし、もう片手で「お金も大好き!」と唱えるのは、どうなんだろうかと。
これでは「ボランティア精神を標榜した金儲け」とされちゃうんではと。


かつてOKWAVE(当時はOKWeb)のサポートに、幾度も連絡した経験があります、「お礼が無い」じゃないんですが。
サポート担当の方々は、「こんな真面目な人が居るのか!」と驚くような素晴らしい方ばかりで、大変驚いた記憶があります。

コミュニティを始めたころ、「お互いの善意で助け合うための場を作った!」と思っていたのに、寄せられる苦情の8割が「どうして、質問者はお礼を言わないのか」といったものでした。
ぼくは、「回答者」は真に「ありがとう」を欲しているのだと気付きました。
(グーグルを超える日 オーケィウェブの挑戦 兼元謙任著 117p)


兼元氏は著作を読み返すと、自身の中では考えが完結しているものの、周囲の方にうまく伝えられていない傾向があるような気がします。
グローバルブレインにしたってそう。