飲み屋のカウンターで実感した、学歴詐称酔客と人生の達人

自分が学生の頃に最も印象深かったのは、夏期休暇中の貧乏旅行中にて山陽本線で遭遇した出来事だ。
凄まじく五月蝿い常客が一人居て、凄い大声でシャウト口調で取り巻きに語っているのだよ。
人相風体があからさまにいかがわしく。
話の内容があまりにも稚拙で。
どー見ても本人が繰り返す「東大卒だから」とはマッチしない人物像でありました。


あー、うっとぉしい。
さて、電車に改札の人がやってきまして、ここで事件が起きました。
この自称「東大卒」の方は、入場券のみを購入した所謂キセルだったんですね。
JR職員に散々怒られ、乗車券を車内にて購入したこの方は、それ以後プッツリと口を閉ざし。
取り巻きっぽい人相悪い連中も、静かに目的地まで口をつぐんだのでした。


さてさて、先日の出来事です。
古い友人と会い、いい時間でもありましので、近隣の飲み屋にでも行こうかと街に出たはいいんですが。
いきなりかなり、雰囲気悪い飲み屋に辿りついてしまいまして。
先客のグループがどーも人相悪く、マナーが悪く。お店の女の子に怒鳴り散らしたりお尻を触ってたんですよ、はい。
驚いちゃったよ、本当に。
ここまでマナーが悪い酔客を見るのは、凄くレア、稀、滅多に無い。


Lucaさんらは、あまり係わり合いに成りたくないムードでしたんで、カウンターの外れでボソボソと、この前拾ったトロイがどうこうとかマニアックな話を小声てしておりました。
酔客らは相変わらず半分怒鳴り口調で議論してて、ジニ係数がどうたらとか格差がとか大学教育がどうこうとかその他諸々週刊誌を読んだだけのような知識を披露して悦に浸ってたんだけど、あまりにも間違いとか事実誤認が多くて横から突っ込みを入れるのを我慢しました。
それで暫く時間が経ち。


リーダー格と思しき方がトイレの帰りに、Lucaさんのツレにいきなり下らないチョッカイを出しまして。
ツレの方は大変な人格者で誰にでも愛されるような素晴らしい方!(と持ち上げてみる)でしたが、やや眉間にシワを寄せて、「止めて下さい」とささやくように拒絶しまして。
ほら、アレですよ。
格好つけるじゃないけど、ツレの女性が酔客に絡まれるのを許容するにはいかないじゃないですか。
Lucaさん:「そっちはそっちで楽しく飲んでいるんでしょう、関わらないで下さいな、迷惑ですよ」


酔客、逆ギレでブチ切れまして。
わめく、わめく。
「何とか大学を出たんだぞぉ!」とか、主席がどうこうとかのたまいまして(酒席の間違いじゃねと)。


Lucaさん:「お店の方に迷惑ですから、外に出ませんか」
酔客:「なにぃ!どうたらこうたら」


あーうっとぉしいって難儀な気持ちで胸一杯だったLucaさんを遮るように、ツレの方が立ち上がりまして。
神々しいオーラを備えた姿は、かなり光ってました。


ツレ:「あなた、何大学を主席で卒業したのですね?本当に?」
酔客:「あーそうだ、うんたらかんたら」
ツレ:「裏門から通りに出て100mほど東に歩くと、何大生なら誰でも知っている定食屋さんがあります。カレーが格安で350円の店です。名前を覚えてますか?(詳細は覚えていないがこんな感じ)」
酔客:「うぅっ?うーっ」
ツレ:「知らないようですね。では大学生協の食堂で味噌ラーメンとコーンサラダを注文すると、お値段は?」
酔客:「。。。。。。」
ツレ:「法学部で有名な、ヒゲの教授の名前は?」
酔客:「(苗字)!、アゴひげが」
ツレ:「そんな人、居ませんよ。どこの講座の教授ですか?」


自分の実感をこの場で伝えるのは、文章力の至らなさのために大変難しく。
20代前半のスーツ姿の小娘が毅然とした態度で、人相悪い酔客をいきなり論破した姿は、感動ものだったのだよ。
「一生ついていきます!姉貴!」みたいな。


店員がヒソヒソとまゆをひそめ。
酔客の仲間がコソコソ話を始め。
酔客はボーッとした顔で、立ちすくみました。


雰囲気があまりにも悪く。
「お勘定、おつりはいいから」と諭吉紙幣をカウンターに置き、足早に店を去りました。


店外に出て、通りを歩きながらツレに。
Lucaさん:「あのさ、何大学卒業だったっけ?」
ツレ:「違います、何とか大です」
Lucaさん:「えっ?じゃぁ食堂の名前とか、メニューの値段ってのは?」
ツレ:「知りませんよ。私はその大学の卒業生ではありません。」
Lucaさん:「えーっ!それじゃ、さっきのは皆、単なるハッタリ?」
ツレ:「あちらはどうせ学歴詐称なのだから、気にする事はありません」


自分は人生の何たるかをあまり熟知しておりませんが。
達人の対処法と自信に満ちた態度を眺め、こういう人になれたらばなぁと、うらやましく思ったのです。