船舶の体当たり攻撃と復元力、水密隔壁

目標となる船舶の横腹に対して、船首から突撃するシーンを映画などで目にする。
船体を衝突したとしたらば、どっちがより酷いダメージを受けるんだろうか。


以前ニュースで、艦首付近からポッキリと折れた画像を見た記憶がある。
長い船舶の端っこがプッチリ切れても、少しばかりの区画で浸水しても、隔壁(水密隔壁)があれば沈没・転覆せずに何とか帰投できる場合もあるようだ(第四艦隊事件とか)。


では舷側、つまり船の横腹にポッカリと穴が開いたらばどうなんだろうか。
急速な浸水が左右非対称のものであれば、船体の復元力を一気に失わせ、転覆するらしい。
  船舶の復元性(艨艟を訪ねて)
  船体中心線隔壁(艨艟を訪ねて)
(もちろん、横方向の転覆モーメントは、隔壁が船体に対して横方向のものばかりであれば、縦方向に設置された隔壁の片側が浸水した場合とは事情は異なるだろう)


また「船首を向けて突撃する側」は事前に浸水が予測されうる船首付近の船倉よりの乗員退避を行えるが、舷側に突撃される側はどの区画が浸水するか事前の判断が難しいとのポイントもある。


昔の海戦は、相手の船に乗り込む場合と、船首の衝角で船体の横腹に穴を開ける場合があったそうな(船舶の船首付近の水面近くに設けられた構造物を衝角(ラム)と呼ぶ)。
ここでは「船首と舷側をぶつけ合ったらば、舷側に穴が開いた方がより不利」としておきます。


4-5年前に戦艦大和のドラマをやってて、注水するようにとの伝令を伝えるため走ってた軍人が負傷するシーンがありましたね。注水しないと艦体の傾斜を回復できず、転覆する。
民間船に注水設備は無いような気がするんだけど。


漁船や捕鯨船、調査捕鯨船の隔壁はどうなっているんだろうか(調査母船の日新丸とかその他目視監視船)。
捕鯨船を含む漁船は船舶区画規程では対象外のようだ。


船体の舷側、喫水線よりも下にポッカリと穴なり亀裂が生じた場合、何分間程度沈没せずに持ちこたえられるのだろうか。
乗組員が退避するだけの時間は、残されるんだろうか。
気になる事ばかりです。

追記

船体の水密隔壁と船首隔壁については、2・3 船体の区分け(日本財団)の下部に掲載されている「図2・8-2 船体構造総合名称図」を見ていただきたい。


また縦隔壁が無い場合の記載を忘れていたため(すいません)、ブログ投稿直後に本文へ付記致しました。