鯨と捕鯨、宣伝と迎合

はてなブックマークから、最近興味を持っている話について興味深い切り口で紹介しているブログを見つけた。
やはり捕鯨問題は歴史問題に似てきたのかも(Baatarismの溜息通信)


ボクら人間ってのは単純で騙されやすいものでさ。
湾岸戦争の頃にしつこく繰り返され放映されていた、「イラクが破壊した油田だの精製施設より流出した油の被害」としてよくお茶の間に出てきた、油まみれの鳥。
あれは米国が契約した広告代理店によるヤラセだって説がある(レントン、だったっけ?)、真偽なんてこの際どーでもいい。


2007年末、オーストラリアで労働党が勝利し、その際にピーターギャレット氏が環境相に任命された。

 【ジャカルタ井田純】オーストラリアで今月発足したラッド労働党政権で、元ロックシンガーのピーター・ギャレット氏(54)が環境相に起用され、話題を集めている。過激な発言で知られ、反捕鯨の立場から日本の調査捕鯨への批判を強めている。
 調査捕鯨について、ギャレット環境相は「残酷かつ野蛮な行為」と非難。日本がザトウクジラ捕獲延期を決めた後も、すべての捕鯨中止を求めている。「対日関係には影響しない」と述べているが、捕鯨を巡りトラブルが起きた場合などに同氏の対応が日豪関係に影を落とす懸念もある。


胡散臭い事件などが多発するんだろうなと漠然と考えてたらば、早くも。
領事館に侵入しペンキばら撒き事件とか。

オーストラリアの反捕鯨活動団体「アニマル・リベレーション・ビクトリア(Animal Liberation Victoria)」は27日、オーストラリア第2の都市メルボルン(Melbourne)の日本領事館前で抗議活動を行った。メンバーは血を模した塗料を塗り、領事館の入口に侵入したが、警察に立ち退かされた。(c)AFP


他国の国旗を悪意を持って汚損するのは、環境保護団体としてはやり過ぎなんじゃないかな。だけどもオーストラリアは違うみたい。
(断りとして:自分は環境保護団体ってのは平和的かつ理知的で、多くの良識者から信頼されるような存在じゃなければ、支持は得られづらいのではと考えてる)

オーストラリアの反捕鯨活動団体アニマル・リベレーション・ビクトリア(Animal Liberation Victoria)は3日、同国メルボルン(Melbourne)の日本領事館前で日本の調査捕鯨に対する抗議活動を行い、血を模して全身を真っ赤にしたメンバーが日本の国旗の上に横たわった。このほか、100人以上の参加者が国旗に署名をした。(c)AFP

ダラダラと、思うところを

極論なのは承知しているんだけどさ。
自分は鯨ってのは食物連鎖ピラミッドのかなり上位に位置する生物であり、人間が生命を維持するための営みとかなり競合するんじゃないかなと考えてる。
そして、人間と鯨は競合する関係であり、共存は難しいんじゃないかな。

(1)クジラの餌の生態についての周知度
 クジラの餌の生態について,知っているものを聞いたところ,「クジラはオキアミなどのプランクトンだけでなく,サンマやイカ,タラ,サケなどを主要な餌として食べている」を挙げた者の割合が52.0%と最も高く,以下,「漁業者が漁獲する前に,はえ縄にかかったマグロをクジラが食べてしまうなどクジラにより漁業が妨げられる事例がある」(12.9%),「イルカやクジラが餌として食べている魚介類の量は,世界の海面漁業生産量の3倍から5倍にのぼる量であると推定されている」(10.4%)などの順となっている。なお,「わからない」と答えた者の割合が41.4%となっている。


おや?感覚的なパーセンテージとかなり乖離しているんで、正直言って驚いた。
「鯨はプランクトン(オキアミなど)を」って文面は、かなりあっちこっちで目にする。自分が小学生の頃に閲覧した図鑑でも、そう。
実態としては、エサは小魚・また食卓に出るようなサイズのお魚なのだよね。
それは置いておくんだけどさ。


人口爆発(ってのがどの程度以上の指数関数的カーブを指すのかわかりませんが)の結果、食料が地球規模で不足するような時代がやってきたとしてさ。
蛋白源は牛・豚・鶏その他諸々の家禽類で足りるのかな。
足りる - と言うとやや文意を損ねてしまうので言い方を変えると - 容易に得られる蛋白源の魚類は、島嶼に居住する第三世界の方々にとっては生命線なのだし。


家畜は草だけでどこまで生産できるのかって問われると、実はやや微妙だったりする。良質(とされる)な品質を維持するには、穀類がエサとして必須なのだ。
(もちろん牧草のみを飼料とする牛も居る。だけどもリーンビーフとか言われ、日本国内の消費者の嗜好には合わない。ヘルシーだって意見はあるけど自分は論拠を知らん。)
(中国の生活水準向上により、従来は第三世界にて主食とされた雑穀類が家畜生産の目的に利用され、穀物市場がどうこうって話は以前どっかに書いたので割愛する)


アメリカやオーストラリアでは、広大な草地が存在する。これらは天然の野草地であったり、また人工草地であったりするのだが。どっちにしても家畜を「草だけで」生産するような食糧生産に望むには、かなり高いポテンシャルを有する。
(断りとして:そのような草地は完全に人為の手を離れた管理を行っているのではなく、場合によっては肥料を散布したり、放牧に適さないような植物ばかりになったらば火をかけ耕す)
皆、もうわかっている事なんだけどさ。
彼らは蛋白源としての漁業資源に対する潜在的な依存度は低いのだよ、代替手段としての牧畜業があるために。


じゃぁ、日本は?
日本の国土面積、またそのうちの平地たる面積なんてのは、人口当たりにしてみれば笑っちゃうほど少ないのだ。
Wikipediaによれば、日本の人口密度は337人/km²。オーストラリアは3人/km²である。
(耕地面積、この場合は放牧放牧または草食動物の餌を生産するに際して利用可能な面積の統計で、「これが正しい!」って数字を知らんのですが、誰か紹介して下さい。白書?農水に聞いちゃった方が確実?先日自分は某ネット上の有名人によるブログに騙されました。)
で。ふと思い立ち、牛を飼育している知人に個人的に聞いたらば、子牛を出荷するまで育てるのに必要な草地の面積は、十分に管理されている草地であったらば3ha程度なのだとか。
(ha:ヘクタールは100m四方の平方、つまり0.01平方キロメーター)
(この3haとの数字は、十分なバイオマス(植物の生産量)がある草地を荒廃させず継続的に利用するに要する密度で、知人の個人的見解である)
(もちろん野草地、つまりは肥料もまかず自然のままの草地ならば事情は違うのだそうだが、自分にはよくわからない)
(林間放牧、つまり森林に牛などを放す方法も以前はあったものの、結局まともな成果は上げられなかったので現在では誰もやってないとのこと。樹木の葉は家畜にとって食べづらいし、管理面で難儀なのだとか)


少し前の文章に戻る。
穀物の輸入も、また飼料としての牧草・野草などが十分には入手しづらい地域ってのは、幾らでもあるものだ。
そのような地域で伝統的な手法(と言うか漁法)で得られる魚類が、どれだけ多くの人々を養っているのだろうかと。
家畜によっては生産性も異なるんだろうけどさ、牧畜なんて難しい地域も多々あるのではと。


鯨から得られるカロリーが問題なのではない。
先日スーパーで購入した鯨肉があまりにもマズイんで、やや閉口したんだけどさ、これは枝葉の問題だ。
鯨が捕食する(誰かがプランクトンと宣伝している)小魚やややデカイ魚、これが問題なのだよ。
人が食べれば有用な資源、だけども鯨が食べればただの糞。


扇情的な言い回しになってはしまうんですがね。
鯨は牧畜業が難しい地域 - この場合の地域ってのは日本国内じゃない - に居住する人々が生きる糧を、確実に奪っている。
そして自分は、鯨よりも第三世界の「人間の営み」の方がより重視すべきだと考えるし。
またまた極論なんだけど、ある種が地球上から絶滅したとしても、それで多くの人々が助かり生き残れるならば、それでいいじゃんって考えるんだ。

捕鯨反対派は、魚類を摂食しない生活を体験すれば良い

自分はイカが好きだ。イカ刺し、イカ入りスパゲッティ、イカ入りシチュー。
イワシも好きだよ。一番好きなメニューは刺身、次にはイワシを油でさっと揚げてマリネにしたもの。
サバはしめ鯖が好きだ。
サンマは秋には日本酒とセットで、楽しみな存在です。
アジは小アジを南蛮漬けにしたマリネか、アジの開きにさっと醤油をかけたのが好きだ。


OK、口がムズムズとしかかる人の気持ちもわかるさ。
だけどさ、鯨の生息数があまりにも増大するならば、上記のメニューはいずれも滅茶苦茶高い高級品になったり、もしくは書籍でしか目にできない存在になっちゃうんでは?
鯨肉が生臭くておいしくないのは知ってるさ(個人の好みだからこの部分に突っ込まないでもらいたい)、ですが鯨のエサとなる魚種はいずれも自分の好物ばかりだよ
 

捕食者と食われる者、そして人間との関係

北海道土産で最も楽しみなのは、トドカレーの缶詰(さほど美味ではないんですが)、次にはエゾシカの肉の加工品だ。
北海道ではエゾシカの生息数の増大は、農業や林業だけではなく、人々の生活に暗い影を落としている。
一例として、ある朝庭木に水をまこうとしたらば、、、、、エゾシカがムシャムシャとガーデニングに励んだ庭を荒らしていたとか。


何でこんなに北海道でエゾシカが増殖しまくったのかってのは、諸説あるようですが。
行政は二つ、致命的勘違いを下したためではと。
1)エゾシカの生息数を見積もるに際して、実際よりも1/3ほどの数字を学者先生が出し、国と北海道庁が信じ込んだ。
 これにより有害獣駆除のコントロールが失敗した。
2)淘汰圧の要因を見誤った
 過去にエゾシカの生息数をコントロールした要因は、食物連鎖の崩壊(生息数の過剰な増大によるカタスタロフィ)ではなく、アイヌによる狩猟では?
 (電波な団体が「エゾシカが増え過ぎるのは狼がいないせいだ!」と思い込み、シベリアオオカミを北海道に本気で放そうと計画しているが、ハイカーや登山客の悲惨な人的被害が生じる可能性を何故に考えないのだと)
 つまり、喰う者・喰われる者の関係とピラミッドは、アイヌ(それと現地に居住した和人)による捕食圧をもってして成立し、一定のバランスをみたのではなかろうか。


食物連鎖ピラミッドの中に、人間が存在するって単純な話を想定してなかったんだろうね。
じゃぁ、鯨は???
結果が出るのは何年・何十年も後。
水域の生物が今よりもより生産性(?)を失い、取り返しがつかなくなった時代を待たねばならないんだろうか。

断りとして

掲載予定の文章のうち、3割しか掲載しなかったため、多少文意がわかりづらい部分が生じているのはご容赦下さい。

2008年1月11日追記事項

「放牧」と草を刈り取って家畜のエサとする場合を、記載中にて混同していた部分を修正しました。

2008年1月13日追記事項

親切な方より放牧地面積についてアドバイスをいただきました、ありがとうございます。
こちらの当初の投稿内容が不十分であったため、また単語や用語を知らず不勉強であるために、好意を無にしてしまう申し訳無さを感じ、正直に謝罪します。