DNAによる識別で濡れ衣を産む可能性 - 名古屋コーチン偽装問題

ここ数日、ネット上では偽の名古屋コーチンの食肉が流通している問題で賑わっているようです。
自分はかなーり食いしん坊なので、食べ物ネタはかなりチェックしているんですが、どうも根本的勘違いをしている方々が居るらしいので、一応。
これって本当に名古屋コーチンを飼育している昔ながらの零細農家に、濡れ衣を着せて「偽物だ偽装だ!」としてしまう危険性がありませんかね?

 にせの「名古屋コーチン」が出回っている問題で、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構」(茨城県つくば市)の調査によって「名古屋コーチンではない」と判別された19点のうち、少なくとも約7割は、業界最大団体である名古屋コーチン普及協会の会員の商品であることがわかった。協会は実態を調査するため、生産や加工に携わる約50の業者から1品目ずつ提出を受け、DNA検査にかけることを決めている。
 同機構の調査結果は、農水省にもすでに報告されている。首都圏や名古屋市の百貨店などでサンプル調査した90点のうち19点が「名古屋コーチンではない」と判別され、普及協会の杉本勇会長が理事長を務める組合の加工品3点が含まれていることがわかっていたが、関係者によると、さらに10点も普及協会の会員の商品だったという。百貨店や通販で売られている生肉も含まれているという。
 それ以外の2点は、普及協会には加盟しない大手の「さんわコーポレーション」(本社・愛知県大治町)の加工品で、残りの4点は小売店や飲食店で「名古屋コーチン」として売られていた製造元が不明の焼き鳥などだったという。
 普及協会の会員の商品13点のうち5点には、普及協会が会員用に発行している「純系名古屋コーチン」の認定シールが張られていたという。認定シールがはってあった通販品の手羽先の生肉の場合、同機構が入手した4本のうち、本物は1本で、残り3本は「名古屋コーチンではない」と判別されたという。
 普及協会によると、認定シールには通し番号がつけられているが、品質管理などは業者任せになっているという。
にせ「名古屋コーチン」、7割は普及協会員が製造http://www.asahi.com/national/update/1005/NGY200710050011.html

 ◇悪質なら処分検討−−普及協会長
 「名古屋コーチン」ブランドの鶏肉や加工品に他の鶏肉が含まれていた問題で、名古屋コーチン普及協会の杉本勇会長は5日、記者会見を開き、会員の商品を対象に行うDNA検査の結果を今月中にも公表することを明らかにした。
 対象は加盟する約70業者のうち、DNA検査が難しい菓子類の業者を除く約50業者。杉本会長は「今月20日までにサンプルを回収し、検査結果は公開する」と述べた。「コーチンでない」と判定された業者で悪質な場合は処分を検討する。
 全体の約2割に別の鶏肉が含まれていたとする独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構」(茨城県つくば市)の市場調査について、杉本会長は「トレーサビリティー(生産履歴)が確実なものを検査したか疑問だ」と検体に問題があるとの見方を示した。
 自身が理事長を務める名古屋市南部食鶏加工協同組合の商品も「2割」に含まれるとの一部報道については「独自に検査を依頼しており、近く公表できる」と話すにとどめた。【井崎憲】

 高級ブランド地鶏「名古屋コーチン」として売られている生肉や加工品の一部に、名古屋コーチン以外の肉が含まれていることが、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構」(茨城県つくば市)の調べで分かった。市場に流通している生肉と加工品計90点をDNA検査したところ、銘柄以外の肉の混入は約2割にあたる19点にのぼった。
 同機構の畜産草地研究所(つくば市)が、少量の肉片に簡易な実験を施すだけで、名古屋コーチンかどうかを判別できるDNA検査法を開発。同研究所の高橋秀彰主任研究員らがこの検査法を使い、今春から半年間かけて市場調査した。
 名古屋市内や首都圏の百貨店、精肉店、飲食店などから、名古屋コーチン普及協会(名古屋市天白区)が発行する認定シールが張ってあるか、原材料名に「名古屋コーチン」だけが表示されている生肉50点、加工品40点を入手。生肉のうち6点、焼き鳥やミンチなどの加工品のうち13点から、別の肉が検出された。
 高橋主任研究員は「(混入という)病巣は深い。この検査法を使って、もっと細かく調べていけば、流通のどの段階で別の肉が混ぜられたのかを突きとめることも可能だ」と話している。


DNAでの検査は万能で、どんな偽装でも見抜けるんだ万歳ってのは、少し違う。
当たり前の話なんですが、「ある検体AとBが違う」のはわかるだろう、確かに。
だけども「ある検体Aがある品種を代表し得るのか?」との点が怪しければ、いささか解釈が危うくなる。


米では、割と簡単らしい。
コシヒカリってのはたった1本のコシヒカリから全国に広まったので、元はたった1つの親。
だからコシヒカリ以外の銘柄の米をコシヒカリとして偽装しても、簡単にコシヒカリか否か判別できるそうな。
(もちろん、新潟県魚沼産コシヒカリは高額で取引されるが、魚沼以外の地域で栽培されたコシヒカリのDNAを調べてたとしても偽装は判明しない)


じゃぁ、ニワトリは?
名古屋コーチンの親鶏は、自治体だか農協から配布されるルートとは別に、細々と地域で飼育していた養鶏業者が長年維持してきた系統が存在する。
どちらも名古屋コーチンである、一応は。
(系統:名古屋コーチンのある個別のグループ、養鶏業者ごとに維持している独自のグループの意味、らしい)


ところが公に行われる調査でのDNAの調査では、これらマイナーな零細養鶏業者が維持してきた系統は、どうなのかって問われたらば、実はみたいな問題があるそうな。
すごーくわかりやすく書けばですね。
ある集落の何とかさん親子代々何十年も飼育している名古屋コーチンは、メジャーな系統と別に長年細々と飼育されていた。これが代表的な系統を名古屋コーチンとする前提条件のDNA分析によっては、名古屋コーチンじゃないと判別されてしまう可能性があるって話。


要約してみますか。
1)コシヒカリは、たった1本の親の子孫ばかりなので、DNAを調べれば偽装を簡単に見破られる。
2)名古屋コーチンは、個人や零細業者が長年飼育する、他とは隔離された多くの親鳥が存在し、DNA診断キットはそれらマイナーな系統をカバーしていない(可能性がある)。